グローバル化が進む現代では、海外の銀行口座を開設する選択肢が以前より身近になっています。しかし、海外口座の利用には特定の目的や状況に適している一方で、全ての人にとってメリットがあるわけではありません。本記事では、海外口座の基本概要から富裕層や一般の人々における具体的な利点・欠点までを整理していきます。
海外口座とは
海外口座とは、外国に拠点を持つ銀行で開設する預金口座のことを指します。これは個人でも法人でも開設可能で、現地通貨や多通貨対応の口座が選べる場合が多いです。例えば、スイスやシンガポールの銀行口座は資産運用や保全のために富裕層に人気があります。近年では、オンライン銀行を通じて非居住者でも簡単に口座開設ができるケースも増えています。
海外口座を持つメリット
資産分散とリスク回避
海外口座を持つことで、国内金融危機や預金封鎖などのリスクに備え、資産を複数国に分散できます。
また、複数の通貨を保持することで為替リスクも軽減できます。最近であればドル円相場は歴史的な推移を辿っていますが、資産をそれぞれに分散していれば資産保全が可能です。
また、国内銀行が破綻した場合、1金融機関あたり元本1,000万円までが保全対象になりますが、もし外貨預金があった場合、外貨預金込みで1,000万円までが保全対象になります。そのため、外貨は海外口座に保管するなどの工夫をすることで、リスク分散ができます。
国際取引の利便性
海外投資や事業活動、留学・旅行の支払いがスムーズになります。現地通貨での取引ができるため、為替手数料の削減にも繋がります。
同時に、海外銀行が提供する高金利の預金商品や多様な金融商品に直接アクセス可能です。金利の高い国の銀行に預ければ高い利息を受け取ることも可能です。
海外積立保険などは、支払い口座に現地の口座を指定しするケースがあるため、そういった保険の契約するには口座保有が必須となってきます。
プライバシー保護
一部の国(例:スイス、シンガポール)では、銀行秘密保持の文化があり、個人情報が厳格に管理されます。
海外口座を持つデメリット
開設・口座維持のハードル
一部の国では非居住者が口座を開設するのが難しく、現地での手続きや高額な最低預金額が必要になる場合があります。また、言語の壁や国によっては口座維持手数料が必要になります。
銀行によっては、一定期間資金の出金・移動・送金等がない場合、休眠口座として扱われ、ATMなどで資金が出金できなくなる場合もあります。比較的日本人に馴染み深い海外口座である香港のHSBCの場合は、2年間口座を動かさなければ休眠してしまいます。対策としては、定期的な送金作業が必要になります。手間ですよね。。
税務管理の複雑化
海外口座と聞くと、節税が連想される方もいると思いますが、基本的に海外の資産も日本に居住しているのであれば課税対象です。また、海外口座の残高や利息収入を正確に報告しなければなりません。未申告は罰則の対象となります。
加えて、5,000万円以上の資産が海外にある場合は、「国外財産調書」を提出する義務があります。これを怠ると、重いペナルティが課されます。具体的には、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処されることがあります。
手数料・為替リスクの負担
海外口座の維持費や国際送金の手数料が高額になることがあります。また、通貨の変動によって円換算の資産価値が大きく変動する可能性があります。
金融規制リスク
各国の法律や規制の変更によって、資金の移動や口座利用が制限されることがあります。
海外の税法に詳しい弁護士などとタッグを組む必要が出てくれば、別途弁護士費用もかかりますね。
サラリーマンには不要
給与収入が中心で、特定の国際取引がない一般のサラリーマンにとっては、海外口座を持つ必要性はほぼありません。国内での資産運用や貯蓄で十分対応可能です。
サラリーマンで海外口座を保有している人は海外積立保険に加入されている方がほとんどでしょう。ただ、海外積立保険のパフォーマンスは、国内保険のパフォーマンスとさほど変わらない場合も多いです。
また、月数万円~数十万円程度の積立であれば、税務管理の煩雑さや手数料のデメリットが勝ちます。
富裕層が海外口座を持つメリット
資産額(現金で10億円以上ならメリットギリギリありそうですが。。)にもよりますが、概ね富裕層であれば、海外口座のメリットが享受できます。
- 資産保全の強化
- 巨額の資産を分散することで、国単位の経済リスクを回避できます。
- グローバル投資の基盤
- 海外不動産や株式などの投資機会を広げるための基盤として活用可能です。
富裕層でも海外資産の税金周りには要注意
基本的には海外資産も課税対象です。その上、5,000万円以上の資産を海外に保有しているなら、税務署へ申告が必要です。またタックスヘイブンと呼ばれる地域もありますが、日本に居住しているのであればタックスヘイブンだろうと課税対象であることには変わりありません。
サラリーマンであれば、海外投資よりも国内投資
サラリーマンにとって、さまざまな手数料がかかる海外投資よりも国内投資が適しています。
海外投資の場合、海外口座とのやりとりに係る送金手数料、為替リスク・言語の壁などが障壁として存在します。また、税制の違い、現地管理の難しさなど、課題は山積みです。もちろんそのコストがペイできるだけの投資額(数千万、数億レベル)であれば話は違ってきますが、海外積立保険のような月数十万程度の投資だと、割りに合いません。
一方、国内投資は、海外投資のような障壁はありません。
実際、私も投資信託や日本株、不動産と、すべて国内で購入できる投資商品で完結していますが、すでに総資産は2.6億を超えています。もちろん親から何か相続したり、事業で一発当てたりなどはありません。純粋にサラリーマンの投資でそれだけの資産形成できています。
なかでも特に国内不動産がうまく行っており、資産形成に一番寄与しています。
サラリーマンであれば海外投資に目を向ける前に、まずは身近な国内市場で経験を積み、着実な資産形成を目指すのが賢明な選択でしょう。
まとめ
海外口座は富裕層にとって資産管理や投資戦略の一環として有用ですが、一般のサラリーマンにとってはほぼ不要な存在です。まずは国内の資産運用や不動産投資を通じて着実に資産を形成し、必要に応じて海外口座の活用を検討するのが理想的なステップといえるでしょう。